2014年11月22日

6657dc44.jpg「 いままでひとの年齢(とし)きいて、
 八十なんていわれると、
 へえっと思ったもんだけど、
 こんだ自分でね、その八十ンなっちまって、
 八十になりゃ、たいてい参っちまうもんだけど、
 参らないから、まごまごすると、
 九十まで生きちまうかも知れない。

 でもね、最近はよく、
 冥土(めいど)へ行った夢見るんです。
 ええと、ここが冥土なんだなって、
 そんな夢を見てる。じっさい、ここまでくると、
 どこまで生きりゃいいんだって、
 いいたくなっちまう。ねえ、つまんないもう。
 いつもそう、なんかあると、ああ面倒くせえ、
 はやく参っちめいてえなって。
 けど、こればかりはね、まさか、
 刀持ちだし腹ァ切るわけにもゆかないし、
 だいいち、そのう、ああいうことは
 やりつけないから、上手くいく気づかいがない 」

(『人間臨終図巻』から古今亭志ん生・五代目 331~332頁 )


高倉健さんが他界したことで今は追悼番組や
追悼特集があちこちで放送されているようです

テレビを見ない私は山田風太郎の

『人間臨終図巻』

を引っ張り出してきて独り読み返しました

健さんと同い年(83歳)で死んだ12名を
風太郎は取り上げています

「 天の時は地の利にしかず
 地の利は人の和にしかず人 」
「 往(さ)る者は追わず来るものは拒まず 」
ほか数多くの言葉を残し故郷で隠遁死した孟子

「 窓を一つ開けてくれ。明かりが
 もっと這入(はい)るように 」
 と最後の詞を残して死んだ文豪ゲーテ

「 黒い光が見える 」と言って死んだ
超人的な好色漢の文豪ユゴー

「 余にもこれから先、ただいちどだけ
 幸福な日が来る。それは、寝て、
 ふたたびさめぬ日だ 」と言って死んだ
鉄血宰相ビスマルク

両眼を失明し脳溢血で死んだ生涯独身の画家ドガ

富山の百姓から一代で安田財閥を築きあげながら
暴富を憎んだ男に刺し殺された安田善次郎

十六年の闘病生活を不屈不撓の意志で耐え
最後は自らの意志で安楽死をとげたフロイト

「 自分が死ねば、世界も宗教も、神そのものも
 消滅するのだ 」と言いながら
牧師の聖書、賛美歌の前で「アーメン」を
唱えて死んだ正宗白鳥

「 私は妻にさようならをいいたいのだ 」と言って
死んだミッドウェー海戦、太平洋戦争で
活躍した米海軍指揮官スプルーアンス

生涯飲む打つ買うの道楽をやりつくしながら
極楽往生をとげた古今亭志ん生・五代目

老衰とパーキンソン氏病におかされて
最後は脳溢血で死んだ毛沢東

老衰の果て腎不全で寂しく死んでいった
「時代劇映画の父」伊藤大輔

83歳で逝った人々にも当然ながら
さまざまの死があります
ここに上げることのない無数無名の
人々にもそれぞれの死があります

高倉健さんの死の報道を聴いて今回も
死について(ということは生について)の
想いをめぐらすことが出来ました

あらためて
健さんのご冥福をお祈りいたします

合掌


今日も一日
みんな?
笑って
微笑んで

追記:

添付した写真はつい最近出かけた寄席で
紙切りの林家正楽に切ってもらった

「高倉健」

です

正楽には意地悪なそれでいて話題性のある
お題を出し困らせるのですが見事に
応えてくれる芸にはいつも感心します


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